旅行費用分割計算
旅行メンバーと各自の支払いを入力し誰が誰にいくら払うかを計算するアプリ。割り勘アルゴリズムを実装。
1. アプリ概要
旅行メンバーと各自の支払いを入力し誰が誰にいくら払うかを計算するアプリ。割り勘アルゴリズムを実装。
このアプリはconvertersカテゴリの実践的なPythonアプリです。使用ライブラリは tkinter(標準ライブラリ)、難易度は ★★☆ です。
このアプリは「変換ツール」カテゴリです。形式変換ツールは入力・処理・出力の三層を明示的に書く好材料で、エラー入力の扱いやバリデーションの基本を体験できます。tkinter(標準ライブラリ) を活かして実装するこの構造は、他のアプリにも応用が効きます。
動かしながら読むことが理解の最短経路です。まずはコードをコピーして実行し、想定どおりに動くことを確認したうえで解説と照らし合わせてください。
カスタマイズでは「機能追加」「UI 改善」「エラー耐性」の三方向で考えると視野が広がります。練習問題にもそれぞれの方向の具体例を用意しています。
2. 機能一覧
- 「追加」ボタン(
add_payment())・「選択削除」ボタン(remove_selected())・「精算プランを計算」ボタン(calculate())・「全クリア」ボタン(clear_all())で操作 ttk.Treeviewによる表形式の一覧表示messagebox.showwarning()によるダイアログ通知- ウィンドウはタイトル「旅行費用分割計算」・サイズ 700x600 で起動
3. 事前準備・環境
Python 3.10 以上 / Windows 11(実機)で起動・基本操作を確認 / Linux Mint 22.3(仮想マシン)で起動・画面表示を確認(macOS は未検証)
Windows 11(実機)で起動と基本操作を確認しています(全機能の網羅テストではありません)。Linux Mint 22.3(仮想マシン)では起動と画面表示を確認しました。macOS は標準ライブラリの範囲で動作する想定ですが、未検証です。
- Python 3.10 以上
- OS: Windows 11(実機で起動・基本操作を確認)・Linux Mint 22.3(仮想マシンで起動・画面表示を確認)
4. 完全なソースコード
右上の「コピー」ボタンをクリックするとコードをクリップボードにコピーできます。
import tkinter as tk
from tkinter import ttk, messagebox
class App100:
"""旅行費用分割計算: メンバーごとの支払いから精算プランを算出"""
def __init__(self, root):
self.root = root
self.root.title("旅行費用分割計算")
self.root.geometry("700x600")
self.root.minsize(700, 600)
self.root.configure(bg="#f8f9fc")
# 支払い記録: [(name, amount), ...]
self.payments = []
self._build_ui()
def _build_ui(self):
"""UI を構築する"""
# タイトル
title_frame = tk.Frame(self.root, bg="#3776ab", pady=12)
title_frame.pack(fill=tk.X)
tk.Label(
title_frame, text="旅行費用分割計算",
font=("Noto Sans JP", 16, "bold"),
bg="#3776ab", fg="white"
).pack()
main = tk.Frame(self.root, bg="#f8f9fc", padx=15, pady=15)
main.pack(fill=tk.BOTH, expand=True)
# 支払い登録フォーム
form = ttk.LabelFrame(main, text="支払いを登録", padding=10)
form.pack(fill=tk.X)
ttk.Label(form, text="名前").grid(row=0, column=0, sticky="w")
self.name_var = tk.StringVar()
ttk.Entry(form, textvariable=self.name_var, width=15).grid(row=0, column=1, padx=8)
ttk.Label(form, text="支払額(円)").grid(row=0, column=2, sticky="w")
self.amount_var = tk.StringVar()
ttk.Entry(form, textvariable=self.amount_var, width=12).grid(row=0, column=3, padx=8)
ttk.Button(form, text="追加", command=self.add_payment).grid(row=0, column=4, padx=4)
ttk.Button(form, text="選択削除", command=self.remove_selected).grid(row=0, column=5, padx=4)
# 支払いリスト
list_frame = ttk.LabelFrame(main, text="支払い一覧", padding=6)
list_frame.pack(fill=tk.BOTH, expand=True, pady=8)
cols = ("名前", "支払額")
self.tree = ttk.Treeview(list_frame, columns=cols, show="headings", height=8)
for c in cols:
self.tree.heading(c, text=c)
self.tree.column("名前", width=200)
self.tree.column("支払額", width=150, anchor="e")
self.tree.pack(fill=tk.BOTH, expand=True)
# 集計ボタン
btn = tk.Frame(main, bg="#f8f9fc")
btn.pack(pady=4)
ttk.Button(btn, text="精算プランを計算", command=self.calculate).pack(side=tk.LEFT, padx=4)
ttk.Button(btn, text="全クリア", command=self.clear_all).pack(side=tk.LEFT, padx=4)
# 結果表示
result_frame = ttk.LabelFrame(main, text="精算プラン", padding=6)
result_frame.pack(fill=tk.BOTH, expand=True)
self.result_text = tk.Text(result_frame, height=8, font=("Noto Sans JP", 11), bg="white")
self.result_text.pack(fill=tk.BOTH, expand=True)
def add_payment(self):
"""支払いを追加する"""
name = self.name_var.get().strip()
if not name:
messagebox.showwarning("入力エラー", "名前を入力してください")
return
try:
amount = float(self.amount_var.get())
if amount < 0:
raise ValueError
except ValueError:
messagebox.showwarning("入力エラー", "支払額には正の数値を入力してください")
return
self.payments.append((name, amount))
self.tree.insert("", tk.END, values=(name, f"{amount:,.0f} 円"))
self.name_var.set("")
self.amount_var.set("")
def remove_selected(self):
"""選択行を削除する"""
selected = self.tree.selection()
if not selected:
return
for item in selected:
idx = self.tree.index(item)
self.tree.delete(item)
if 0 <= idx < len(self.payments):
del self.payments[idx]
def clear_all(self):
"""全データをクリアする"""
self.payments.clear()
for item in self.tree.get_children():
self.tree.delete(item)
self.result_text.delete("1.0", tk.END)
def calculate(self):
"""精算プランを計算する: 各人の収支から最小取引数で誰が誰に支払うかを算出"""
if not self.payments:
messagebox.showwarning("警告", "支払いを1件以上登録してください")
return
# 各人の合計支払い額を集計
totals = {}
for name, amount in self.payments:
totals[name] = totals.get(name, 0) + amount
people = list(totals.keys())
n = len(people)
if n < 2:
messagebox.showwarning("警告", "メンバーが2人以上必要です")
return
total_sum = sum(totals.values())
avg = total_sum / n
# 各人の収支(支払額 - 平均)。プラスは多く払った=受取、マイナスは支払う側
balances = {p: totals[p] - avg for p in people}
# グリーディに精算: 受取側と支払側をペアリング
creditors = sorted(((p, b) for p, b in balances.items() if b > 0.005), key=lambda x: -x[1])
debtors = sorted(((p, -b) for p, b in balances.items() if b < -0.005), key=lambda x: -x[1])
transactions = []
i = j = 0
# リストをミュータブルにコピー
creds = [list(c) for c in creditors]
debs = [list(d) for d in debtors]
while i < len(debs) and j < len(creds):
pay = min(debs[i][1], creds[j][1])
transactions.append((debs[i][0], creds[j][0], pay))
debs[i][1] -= pay
creds[j][1] -= pay
if debs[i][1] < 0.01:
i += 1
if creds[j][1] < 0.01:
j += 1
# 結果出力
self.result_text.delete("1.0", tk.END)
out = []
out.append(f"参加者: {n} 名")
out.append(f"合計支出: {total_sum:,.0f} 円")
out.append(f"1人あたり負担: {avg:,.0f} 円")
out.append("")
out.append("【各メンバーの収支】")
for p in people:
sign = "+" if balances[p] >= 0 else ""
out.append(f" {p}: 支払 {totals[p]:,.0f} 円 ({sign}{balances[p]:,.0f} 円)")
out.append("")
out.append("【精算プラン】")
if not transactions:
out.append(" 全員ぴったり同額です。精算不要!")
else:
for fr, to, amt in transactions:
out.append(f" {fr} → {to}: {amt:,.0f} 円")
self.result_text.insert("1.0", "\n".join(out))
if __name__ == "__main__":
root = tk.Tk()
app = App100(root)
root.mainloop()
5. コード解説
旅行費用分割計算: メンバーごとの支払いから精算プランを算出のコードを、実際に書かれている実装に沿って解説します。
クラス設計とコンストラクタ
App100 クラスにアプリの全機能をまとめています(メソッド6個・全165行)。__init__ ではタイトル「旅行費用分割計算」とウィンドウサイズ 700x600 を設定します。最後に _build_ui() で画面を組み立てます。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
ウィジェット構成
画面は tk.Frame×3・tk.Label・ttk.LabelFrame×3・ttk.Label×2・ttk.Entry×2・ttk.Button×4・ttk.Treeview・tk.Text で構成しています。見出し付きの枠(LabelFrame)は「支払いを登録」「支払い一覧」「精算プラン」のラベルでエリアを区切っています。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
イベント処理とボタンの接続
「追加」ボタン(add_payment())・「選択削除」ボタン(remove_selected())・「精算プランを計算」ボタン(calculate())・「全クリア」ボタン(clear_all())を command= で接続しています。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
例外処理
try-except で ValueError を捕捉しています。あわせて messagebox.showwarning() のダイアログで、ユーザーへの通知・確認を行います。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
6. ステップバイステップガイド
このアプリをゼロから自分で作る手順を解説します。コードをコピーするだけでなく、実際に手順を追って自分で書いてみましょう。
-
1ファイルを作成する
新しいファイルを作成して app100.py と保存します。使うのは
tkinterだけなので、追加インストールは不要です。 -
2クラスの骨格を作る
App100クラスを定義し、__init__と、末尾のroot = tk.Tk()~mainloop()の最小構成を書いて、まず空のウィンドウが出ることを確認します。 -
3ウィンドウを設定する
title("旅行費用分割計算")・geometry("700x600")・configure(bg="#f8f9fc")・minsize(700, 600)をコンストラクタで設定します。 -
4画面部品を並べる
_build_ui()の中で、tk.Frame×3・tk.Label・ttk.LabelFrame×3・ttk.Label×2・ttk.Entry×2・ttk.Button×4・ttk.Treeview・tk.Textを作って配置します(掲載コードと同じ並び順で書くとレイアウトが一致します)。まず表示だけ確認しましょう。 -
5イベントを接続する
「2. 機能一覧」で挙げた各ボタンを
command=で対応するメソッド(add_payment()・remove_selected()・calculate()・clear_all())につなぎます。 -
6中心になるメソッドを実装する
アプリの本体である
calculate()(57行)・add_payment()(17行)・remove_selected()(10行)・clear_all()(6行) を実装します。 -
7動作確認する
python app100.pyで起動し、各ボタンが反応することを確認します。
7. カスタマイズアイデア
基本機能を習得したら、以下のカスタマイズに挑戦してみましょう。
💡 ダークモードを追加する
bg色・fg色を辞書で管理し、ボタン1つでダークモード・ライトモードを切り替えられるようにしましょう。
💡 結果をファイルに保存する
このコードに保存処理はないため、表示中の数値や結果はアプリを閉じると消えます。テキストファイルへ書き出して、次回起動時に読み込む機能を追加してみましょう。
💡 設定ダイアログ
フォントサイズや色などの設定をユーザーが変更できるオプションダイアログを追加しましょう。
8. よくある問題と解決法
❌ 文字のフォントが崩れる・見た目が違う
原因:このコードは font=("Noto Sans JP", ...) のようにフォント名を直接指定しています。環境にこのフォントが入っていないと、OS が代わりのフォントで表示するため、見本と見た目が変わることがあります。
解決法:動作には支障ありません。気になる場合は font 引数の名前を自分の OS に入っているフォントへ書き換えるか、font 引数を省略してください。
❌ ウィンドウの大きさが画面に合わない
原因:geometry("700x600") の固定サイズで起動するためです。
解決法:geometry() と minsize() の両方の数値を書き換えて起動サイズを調整してください。なお、このコードにはウィンドウサイズを固定する設定(resizable の指定)が無いため、ウィンドウの端をドラッグしたサイズ変更は既定どおり可能です。ただし minsize(700, 600) を指定しているため、起動時の大きさより小さくは縮められません(縮めると画面部品が表示されなくなるのを防ぐためです)。
9. 練習問題
アプリの理解を深めるための練習問題です。気になるものから挑戦してみてください(課題3は定型の発展課題です)。このアプリは入力された金額を足し引きして並べるだけで、精算の助言をするものではありません。実際のやり取りは当事者どうしで確かめてください。練習は架空の名前と金額で試せます。計算は小数のまま進み、表示のときだけ円未満を丸めます(145〜158行)。3人で1,000円を1人が立て替えた場合(立て替えていない2人は0円で登録します)、収支は次のとおりです。「+667 円」が1人と「-333 円」が2人、精算プランは「333 円」が2件で合計666円です。1円ぶんは表示の丸めで消えます。
-
課題1:支払額を1円単位に限る
支払額は
float()で読み取ります(74行)。1000.5のような小数も通り、一覧にはf"{amount:,.0f} 円"で「1,000 円」と表示されます(81行)。画面の数字と計算に使う値がずれるため、精算プランの金額も一覧から追えなくなります。期待結果:支払額に
1000.5と入れて「追加」を押すと、「支払額は1円単位で入力してください」と出て一覧に増えない合格条件
1000はこれまでどおり追加できるabcのときは、これまでどおり「支払額には正の数値を入力してください」が出る(77〜78行)0は追加できる(75行が弾くのはマイナスだけ)
ヒント①(どこを触るか): 触るのは1か所です。金額を読み取っている73〜79行の
tryの中、75行の隣です。
ヒント②(使うもの):amount != int(amount)なら1円未満の端数が入っています。そのときはmessagebox.showwarning("入力エラー", "支払額は1円単位で入力してください")を出してreturnしてください(77〜78行と同じ書き方です)。raise ValueErrorだけでも弾けますが、その場合の知らせは78行の「支払額には正の数値を入力してください」になります。
つまずきやすい点:float()は1e3(=1000.0)も全角の1000も通します。厳しくしたいときはint(self.amount_var.get())へ変えてValueErrorを受けてください。この書き方なら1e3は弾かれますが、全角の数字はint()でも通ります。カンマ付きの1,000は、どちらの書き方でもValueErrorです。 -
課題2:支払いを変えたら古い精算プランを消す
calculate()の結果はresult_textに残り続けます(142行・159行)。そのあとに支払いを足しても消しても、結果欄は古いままです(67〜94行に消す処理はありません)。金額を1件足した直後の画面を見て、古いプランのとおりに精算してしまう事故が起こります。期待結果:精算プランを計算したあとに支払いを1件追加すると、精算プランの欄が空になる
合格条件
- 「選択削除」で1件消したときも、同じように空になる
- 行を選ばずに「選択削除」を押したときは、精算プランが残る(88〜89行で先に戻るため)
- 「精算プランを計算」を押せば、これまでどおり新しいプランが出る
ヒント①(どこを触るか): 触るのは2か所です。
add_payment()の最後(83行の下)と、remove_selected()の最後(94行の下)です。
ヒント②(使うもの): どちらもself.result_text.delete("1.0", tk.END)の1行です。101行・142行と同じ書き方です。
つまずきやすい点:remove_selected()では、90〜94行のforの中へ入れると選んだ行の数だけ実行されます。ループの外、つまりメソッドの最後に置いてください。88〜89行より前へ置くと、行を選ばずに押しただけで精算プランが消えます。消すかわりに「支払いが変わりました」と表示する作りでもかまいません。 -
課題3:保存機能の追加
処理結果をファイルに保存する機能を追加しましょう。
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