パスワード生成アプリ
文字種・桁数・個数を指定してパスワードをまとめて生成する学習用アプリ。string・secretsモジュールとクリップボード操作を学びます。
1. アプリ概要
文字種・桁数・個数を指定してパスワードをまとめて生成する学習用アプリ。string・secretsモジュールとクリップボード操作を学びます。
このアプリはツールカテゴリに分類される実践的なGUIアプリです。使用ライブラリは tkinter(標準ライブラリ) で、難易度は ★☆☆ です。
このアプリは「ツール」カテゴリです。日々の作業を自動化する実用ツールは Python が最も得意とする領域です。短いコードで実用性のある成果物が作れる点が魅力です。tkinter(標準ライブラリ) を活かして実装するこの構造は、他のアプリにも応用が効きます。
完成形を見てから細部の解説に進む流れが効果的です。実行→気になる箇所を解説で確認→自分の手で改造、というサイクルで定着が早まります。
カスタマイズ章では具体的な拡張アイデアを示しています。一つ実装するごとに動作確認することで、変更が予期せぬ副作用を起こさないかも体感できます。
2. 機能一覧
- 「生成する」ボタン(
generate())・「クリップボードにコピー」ボタン(copy())で操作 messagebox.showinfo()・messagebox.showwarning()によるダイアログ通知- ウィンドウはタイトル「パスワード生成アプリ」・サイズ 893x623 で起動
- 乱数は
randomではなくsecretsモジュールで作ります(secrets.choice()・secrets.SystemRandom().shuffle()) - 「個数」欄で 1〜10 件をまとめて生成し、読み取り専用の
tk.Textに1行1件で表示します - 「クリップボードにコピー」は表示中の全件を改行区切りでまとめてコピーします
3. 事前準備・環境
Python 3.10 以上 / Windows 11(実機)で起動・基本操作を確認 / Linux Mint 22.3(仮想マシン)で起動・画面表示を確認(macOS は未検証)
Windows 11(実機)で起動と基本操作を確認しています(全機能の網羅テストではありません)。Linux Mint 22.3(仮想マシン)では起動と画面表示を確認しました。macOS は標準ライブラリの範囲で動作する想定ですが、未検証です。
- Python 3.10 以上
- OS: Windows 11(実機で起動・基本操作を確認)・Linux Mint 22.3(仮想マシンで起動・画面表示を確認)
4. 完全なソースコード
右上の「コピー」ボタンをクリックするとコードをクリップボードにコピーできます。
import tkinter as tk
from tkinter import ttk, messagebox
# 乱数は random ではなく secrets を使う(公式ドキュメントがパスワード等の
# 用途では secrets を優先するよう案内している)
import secrets
import string
class App14:
"""パスワード生成アプリ(学習用)"""
def __init__(self, root):
self.root = root
self.root.title("パスワード生成アプリ")
self.root.geometry("893x623")
self.root.minsize(893, 623)
self.root.configure(bg="#f8f9fc")
self._build_ui()
def _build_ui(self):
title_frame = tk.Frame(self.root, bg="#3776ab", pady=12)
title_frame.pack(fill=tk.X)
tk.Label(title_frame, text="パスワード生成アプリ",
font=("Noto Sans JP", 16, "bold"),
bg="#3776ab", fg="white").pack()
main_frame = tk.Frame(self.root, bg="#f8f9fc", padx=24, pady=16)
main_frame.pack(fill=tk.BOTH, expand=True)
# 設定
setting_frame = ttk.LabelFrame(main_frame, text="設定", padding=10)
setting_frame.pack(fill=tk.X, pady=(0, 10))
tk.Label(setting_frame, text="文字数:").grid(row=0, column=0, sticky="w", pady=4)
self.length_var = tk.IntVar(value=16)
ttk.Spinbox(setting_frame, from_=4, to=64, textvariable=self.length_var,
width=6, font=("Arial", 12)).grid(row=0, column=1, padx=8, sticky="w")
tk.Label(setting_frame, text="個数:").grid(row=0, column=2, sticky="w", pady=4)
self.count_var = tk.IntVar(value=5)
ttk.Spinbox(setting_frame, from_=1, to=10, textvariable=self.count_var,
width=6, font=("Arial", 12)).grid(row=0, column=3, padx=8, sticky="w")
self.use_upper = tk.BooleanVar(value=True)
self.use_lower = tk.BooleanVar(value=True)
self.use_digits = tk.BooleanVar(value=True)
self.use_symbols = tk.BooleanVar(value=True)
ttk.Checkbutton(setting_frame, text="大文字 (A-Z)",
variable=self.use_upper).grid(row=1, column=0, sticky="w", columnspan=2)
ttk.Checkbutton(setting_frame, text="小文字 (a-z)",
variable=self.use_lower).grid(row=2, column=0, sticky="w", columnspan=2)
ttk.Checkbutton(setting_frame, text="数字 (0-9)",
variable=self.use_digits).grid(row=3, column=0, sticky="w", columnspan=2)
ttk.Checkbutton(setting_frame, text="記号 (!@#$...)",
variable=self.use_symbols).grid(row=4, column=0, sticky="w", columnspan=2)
ttk.Button(main_frame, text="生成する", command=self.generate).pack(pady=8)
# 結果(1行に1件・読み取り専用)
result_frame = ttk.LabelFrame(main_frame, text="生成されたパスワード(1行に1件)",
padding=10)
result_frame.pack(fill=tk.BOTH, expand=True, pady=(0, 8))
text_row = tk.Frame(result_frame)
text_row.pack(fill=tk.BOTH, expand=True, pady=(0, 6))
self.result_text = tk.Text(text_row, height=8, font=("Courier", 13),
bg="white", state=tk.DISABLED)
self.result_text.pack(side=tk.LEFT, fill=tk.BOTH, expand=True)
scrollbar = ttk.Scrollbar(text_row, command=self.result_text.yview)
scrollbar.pack(side=tk.RIGHT, fill=tk.Y)
self.result_text.configure(yscrollcommand=scrollbar.set)
ttk.Button(result_frame, text="クリップボードにコピー",
command=self.copy).pack()
# 強度バー
strength_frame = ttk.LabelFrame(main_frame, text="強度", padding=8)
strength_frame.pack(fill=tk.X)
self.strength_bar = ttk.Progressbar(strength_frame, maximum=4, length=300)
self.strength_bar.pack(fill=tk.X, pady=(0, 4))
self.strength_label = tk.Label(strength_frame, text="", bg="#f8f9fc",
font=("Noto Sans JP", 10))
self.strength_label.pack()
def generate(self):
chars = ""
if self.use_upper.get():
chars += string.ascii_uppercase
if self.use_lower.get():
chars += string.ascii_lowercase
if self.use_digits.get():
chars += string.digits
if self.use_symbols.get():
chars += string.punctuation
if not chars:
messagebox.showwarning("警告", "文字種を1つ以上選択してください")
return
# 必ず各文字種を1文字含める
pools = []
if self.use_upper.get():
pools.append(string.ascii_uppercase)
if self.use_lower.get():
pools.append(string.ascii_lowercase)
if self.use_digits.get():
pools.append(string.digits)
if self.use_symbols.get():
pools.append(string.punctuation)
length = self.length_var.get()
count = self.count_var.get()
passwords = [self._make_one(pools, chars, length) for _ in range(count)]
self._show("\n".join(passwords))
# 強度
score = len(pools)
if length >= 16:
score = min(4, score + 1)
self.strength_bar["value"] = score
labels = ["", "弱い", "普通", "強い", "非常に強い"]
colors = ["", "#e74c3c", "#e67e22", "#2ecc71", "#27ae60"]
self.strength_label.config(text=labels[score], fg=colors[score])
def _make_one(self, pools, chars, length):
"""各文字種を1文字以上含むパスワードを1件作る"""
pw_chars = [secrets.choice(pool) for pool in pools]
for _ in range(length - len(pw_chars)):
pw_chars.append(secrets.choice(chars))
# secrets の乱数でシャッフル(random.shuffle は使わない)
secrets.SystemRandom().shuffle(pw_chars)
return "".join(pw_chars[:length])
def _show(self, text):
"""読み取り専用の Text へ結果を書き込む"""
self.result_text.config(state=tk.NORMAL)
self.result_text.delete("1.0", tk.END)
self.result_text.insert("1.0", text)
self.result_text.config(state=tk.DISABLED)
def copy(self):
text = self.result_text.get("1.0", tk.END).strip()
if not text:
return
self.root.clipboard_clear()
self.root.clipboard_append(text)
messagebox.showinfo("コピー完了",
"生成した全パスワードをクリップボードにコピーしました")
if __name__ == "__main__":
root = tk.Tk()
app = App14(root)
root.mainloop()
5. コード解説
パスワード生成アプリ(学習用)のコードを、実際に書かれている実装に沿って解説します。
クラス設計とコンストラクタ
App14 クラスにアプリの全機能をまとめています(メソッド6個・全155行)。__init__ ではタイトル「パスワード生成アプリ」とウィンドウサイズ 893x623 を設定します。最後に _build_ui() で画面を組み立てます。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
ウィジェット構成
画面は tk.Frame×3・tk.Label×4・ttk.LabelFrame×3・ttk.Spinbox×2・ttk.Checkbutton×4・ttk.Button×2・tk.Text・ttk.Scrollbar・ttk.Progressbar で構成しています。見出し付きの枠(LabelFrame)は「設定」「生成されたパスワード(1行に1件)」「強度」のラベルでエリアを区切っています。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
イベント処理とボタンの接続
「生成する」ボタン(generate())・「クリップボードにコピー」ボタン(copy())を command= で接続しています。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
なぜ random ではなく secrets を使うのか
このアプリの乱数は secrets.choice() と secrets.SystemRandom().shuffle() で作っています。random を使っていないのは、Python 公式ドキュメントが random のページで「このモジュールの擬似乱数生成器をセキュリティ目的に使用してはいけません」と警告しているからです。random の中心にあるのはメルセンヌツイスタという生成器で、同じページに「メルセンヌツイスタは完全に決定論的であるため、全ての目的に合致しているわけではなく、暗号化の目的には全く向いていません」と書かれています。決定論的とは、内部状態(シード)が同じなら同じ並びを再現できるということです。
一方 secrets は、OS が用意している乱数源を使ってパスワードや認証トークン向けの乱数を作るためのモジュールで、公式ドキュメントもこの用途では random の既定の擬似乱数生成器より secrets を優先するよう案内しています。書き換えは import 行と呼び出しだけで、random.choice(pool) → secrets.choice(pool)、random.shuffle(pw_chars) → secrets.SystemRandom().shuffle(pw_chars) と置き換えれば引数はそのまま動きます。出典: random — 擬似乱数を生成する(Python 公式ドキュメント)・secrets — 機密を管理するための安全な乱数を生成する(Python 公式ドキュメント)(いずれも 2026-09-09 閲覧)。
ただし、このコードは仕組みを学ぶための学習用です。乱数生成器を secrets にしても、作ったパスワードをどこに保管するか、クリップボードに残った値をいつ消すか、といった運用側の設計はこのアプリの守備範囲に入っていません。実際にパスワードを管理するときは、実績のある専用のパスワードマネージャーをお使いください。
6. ステップバイステップガイド
このアプリをゼロから自分で作る手順を解説します。コードをコピーするだけでなく、実際に手順を追って自分で書いてみましょう。
-
1ファイルを作成する
新しいファイルを作成して app14.py と保存します。使うのは
secrets・string・tkinterだけなので、追加インストールは不要です。 -
2クラスの骨格を作る
App14クラスを定義し、__init__と、末尾のroot = tk.Tk()~mainloop()の最小構成を書いて、まず空のウィンドウが出ることを確認します。 -
3ウィンドウを設定する
title("パスワード生成アプリ")・geometry("893x623")・configure(bg="#f8f9fc")・minsize(893, 623)をコンストラクタで設定します。 -
4画面部品を並べる
_build_ui()の中で、tk.Frame×3・tk.Label×4・ttk.LabelFrame×3・ttk.Spinbox×2・ttk.Checkbutton×4・ttk.Button×2・tk.Text・ttk.Scrollbar・ttk.Progressbarを作って配置します(掲載コードと同じ並び順で書くとレイアウトが一致します)。まず表示だけ確認しましょう。 -
5イベントを接続する
「2. 機能一覧」で挙げた各ボタンを
command=で対応するメソッド(generate()・copy())につなぎます。 -
6中心になるメソッドを実装する
アプリの本体である
generate()(39行)・copy()(8行)・_make_one()(8行) を実装します。 -
7動作確認する
python app14.pyで起動し、各ボタンが反応することを確認します。
7. カスタマイズアイデア
基本機能を習得したら、以下のカスタマイズに挑戦してみましょう。少しずつ機能を追加することで、Pythonのスキルが飛躍的に向上します。
💡 ダークモードを追加する
bg色・fg色を辞書で管理し、ボタン1つでダークモード・ライトモードを切り替えられるようにしましょう。
💡 結果をファイルに保存する
このコードに保存処理はないため、表示中の数値や結果はアプリを閉じると消えます。テキストファイルへ書き出して、次回起動時に読み込む機能を追加してみましょう。
💡 入力履歴機能
以前の入力値を覚えておいてComboboxのドロップダウンで再選択できる履歴機能を追加しましょう。
8. よくある問題と解決法
❌ 文字のフォントが崩れる・見た目が違う
原因:このコードは font=("Noto Sans JP", ...) のようにフォント名を直接指定しています。環境にこのフォントが入っていないと、OS が代わりのフォントで表示するため、見本と見た目が変わることがあります。
解決法:動作には支障ありません。気になる場合は font 引数の名前を自分の OS に入っているフォントへ書き換えるか、font 引数を省略してください。
❌ ウィンドウの大きさが画面に合わない
原因:geometry("893x623") の固定サイズで起動するためです。
解決法:geometry() と minsize() の両方の数値を書き換えて起動サイズを調整してください。なお、このコードにはウィンドウサイズを固定する設定(resizable の指定)が無いため、ウィンドウの端をドラッグしたサイズ変更は既定どおり可能です。ただし minsize(893, 623) を指定しているため、起動時の大きさより小さくは縮められません(縮めると画面部品が表示されなくなるのを防ぐためです)。
❌ random で作ったパスワードは危ないと聞いた
原因:Web のサンプルコードは random.choice() でパスワードを組み立てているものが多いためです。random の擬似乱数生成器は決定論的で、Python 公式ドキュメントが「セキュリティ目的に使用してはいけません」と明記しています(random — 擬似乱数を生成する・2026-09-09 閲覧)。
解決法:import random を import secrets に変え、random.choice(...) を secrets.choice(...) に、random.shuffle(...) を secrets.SystemRandom().shuffle(...) に置き換えます。引数は同じなので、置き換えるのは import 行と呼び出しだけです。このページで配布しているコードは置換済みです。
9. 練習問題
アプリの理解を深めるための練習問題です。気になるものから挑戦してみてください(課題3は全アプリ共通の定型課題です)。このアプリは学習用のサンプルで、生成したパスワードの安全性を保証するものではありません。強度バーの表示も簡易な目安です。
-
課題1:強度の判定に「文字数」を反映させる
いまの強度は、選んだ文字種の数がほぼそのまま点数になります。文字種を4つオンにすれば、4文字でも「非常に強い」と表示されます。文字数が8未満のときは点数を1にするルールを足しましょう。
期待結果:文字種を4つオンにして文字数を4にすると、いまは「非常に強い」と出る。ルールを足したあとは「弱い」になり、バーは1目盛りで止まる。
合格条件
- 文字種4つ・文字数4 で「弱い」になる
- 文字種4つ・文字数16 では今までどおり「非常に強い」のまま
labelsとcolorsの添字が範囲外にならない
ヒント①(どこを触るか): 触るのは
generate()の強度計算1か所です。score = len(pools)からバーへ値を入れる直前までの数行で、_make_one()や_show()は触りません。
ヒント②(使うもの):scoreはlabelsとcolors(どちらも5要素)の添字にそのまま使われます。if length < 8: score = 1のように書きます。挿入位置はmin(4, score + 1)の直後、strength_barへ代入する行の前です。バーとラベルの両方に同じscoreが渡るため、順番を逆にするとバーだけ元の値のまま残ります。
つまずきやすい点:scoreが 0 になるとlabels[0]は空文字なので、強度の文字だけ消えます。いま文字種が1つも無い場合は警告を出してreturnするため 0 にはなりませんが、式を書き換えるときは 1 未満にしないでください。 -
課題2:使う記号を自分で決めた8種類に絞る
いま記号として使うのは
string.punctuationの32文字すべてです。サービスによっては使えない記号があるため、!@#$%&*?の8種類だけを使うように変えます。期待結果:記号だけをオンにして生成すると、出てくる文字が
!@#$%&*?の8種類だけになる。~や^は出てこない。合格条件
- 記号だけをオンにした生成結果が、決めた8種類だけでできている
- 記号をオフにしたときの生成結果は今までどおり
- 記号を含む設定では、いままでどおり記号が最低1文字入る
ヒント①(どこを触るか): 触るのは2か所です。
generate()の中でstring.punctuationは、材料をつなぐchars用とpools用の2回出てきます。片方だけ直すと、全体の材料と「必ず1文字入れる」側がずれるので注意してください。
ヒント②(使うもの): クラスの先頭にSYMBOLS = "!@#$%&*?"のような定数を置くと、self.SYMBOLSで両方から参照できます。stringの import は大文字・小文字・数字で使うため残してください。
つまずきやすい点: 記号を減らすと、作れるパスワードの組み合わせも減ります。この課題は「使えない記号を避ける」ためのもので、強度を上げるためのものではありません。 -
課題3:保存機能の追加
入力値や計算結果をファイルに保存する機能を追加しましょう。jsonやcsvモジュールを使います。
写経中に赤いエラー文が出たら、Pythonエラー一覧&解決法(英語メッセージ逆引き)で原因と直し方をすぐ確認できます。
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