家計簿アプリ
収入・支出を記録して残高を管理するシンプルな家計簿。Treeviewウィジェットの実装を学びます。
1. アプリ概要
収入・支出を記録して残高を管理するシンプルな家計簿。Treeviewウィジェットの実装を学びます。
このアプリは管理カテゴリに分類される実践的なGUIアプリです。使用ライブラリは tkinter(標準ライブラリ) で、難易度は ★★☆ です。
このアプリは「整理ツール」カテゴリです。整理・分類系のツールはデータ構造とユーザー操作を結びつける書き方を学ぶ好機です。設計次第で書きやすさが大きく変わります。tkinter(標準ライブラリ) を活かして実装するこの構造は、他のアプリにも応用が効きます。
完成形を見てから細部の解説に進む流れが効果的です。実行→気になる箇所を解説で確認→自分の手で改造、というサイクルで定着が早まります。
カスタマイズ章では具体的な拡張アイデアを示しています。一つ実装するごとに動作確認することで、変更が予期せぬ副作用を起こさないかも体感できます。
2. 機能一覧
- 「追加」ボタン(
add_record())・「選択削除」ボタン(delete_record())で操作 ttk.Treeviewによる表形式の一覧表示messagebox.showerror()・messagebox.showwarning()によるダイアログ通知- ウィンドウはタイトル「家計簿アプリ」・サイズ 580x550 で起動
3. 事前準備・環境
Python 3.10 以上 / Windows 11(実機)で起動・基本操作を確認 / Linux Mint 22.3(仮想マシン)で起動・画面表示を確認(macOS は未検証)
Windows 11(実機)で起動と基本操作を確認しています(全機能の網羅テストではありません)。Linux Mint 22.3(仮想マシン)では起動と画面表示を確認しました。macOS は標準ライブラリの範囲で動作する想定ですが、未検証です。
- Python 3.10 以上
- OS: Windows 11(実機で起動・基本操作を確認)・Linux Mint 22.3(仮想マシンで起動・画面表示を確認)
4. 完全なソースコード
右上の「コピー」ボタンをクリックするとコードをクリップボードにコピーできます。
import tkinter as tk
from tkinter import ttk, messagebox
from datetime import date
class App42:
"""家計簿アプリ"""
def __init__(self, root):
self.root = root
self.root.title("家計簿アプリ")
self.root.geometry("580x550")
self.root.minsize(580, 550)
self.root.configure(bg="#f8f9fc")
self.records = []
self._build_ui()
def _build_ui(self):
title_frame = tk.Frame(self.root, bg="#3776ab", pady=12)
title_frame.pack(fill=tk.X)
tk.Label(title_frame, text="家計簿アプリ",
font=("Noto Sans JP", 16, "bold"),
bg="#3776ab", fg="white").pack()
main_frame = tk.Frame(self.root, bg="#f8f9fc", padx=16, pady=12)
main_frame.pack(fill=tk.BOTH, expand=True)
# 入力
add_frame = ttk.LabelFrame(main_frame, text="記録を追加", padding=10)
add_frame.pack(fill=tk.X, pady=(0, 10))
for row, (label, attr, default) in enumerate([
("日付:", "date_entry", str(date.today())),
("内容:", "desc_entry", ""),
("金額 (円):", "amount_entry", ""),
]):
tk.Label(add_frame, text=label, width=10, anchor="w").grid(
row=row, column=0, sticky="w", pady=3)
entry = ttk.Entry(add_frame, font=("Noto Sans JP", 11), width=18)
entry.insert(0, default)
entry.grid(row=row, column=1, padx=6, sticky="ew")
setattr(self, attr, entry)
tk.Label(add_frame, text="種別:").grid(row=0, column=2, sticky="w", padx=(12, 0))
self.type_var = tk.StringVar(value="支出")
ttk.Combobox(add_frame, textvariable=self.type_var,
values=["収入", "支出"], state="readonly", width=8).grid(
row=0, column=3, padx=6)
ttk.Button(add_frame, text="追加", command=self.add_record).grid(
row=1, column=2, columnspan=2, padx=6, pady=3, sticky="ew")
add_frame.columnconfigure(1, weight=1)
# 残高表示
balance_frame = tk.Frame(main_frame, bg="#f8f9fc")
balance_frame.pack(fill=tk.X, pady=(0, 8))
for col, (label, attr, color) in enumerate([
("収入合計", "income_lbl", "#27ae60"),
("支出合計", "expense_lbl", "#e74c3c"),
("残高", "balance_lbl", "#3776ab"),
]):
box = tk.Frame(balance_frame, bg="white", relief=tk.SOLID, bd=1, padx=12, pady=8)
box.pack(side=tk.LEFT, fill=tk.X, expand=True, padx=4)
tk.Label(box, text=label, bg="white", fg="#888", font=("Noto Sans JP", 9)).pack()
lbl = tk.Label(box, text="¥0", bg="white", fg=color,
font=("Noto Sans JP", 14, "bold"))
lbl.pack()
setattr(self, attr, lbl)
# 一覧
list_frame = ttk.LabelFrame(main_frame, text="記録一覧", padding=8)
list_frame.pack(fill=tk.BOTH, expand=True)
cols = ("日付", "内容", "種別", "金額")
self.tree = ttk.Treeview(list_frame, columns=cols, show="headings", height=8)
for col, w in zip(cols, [90, 180, 60, 100]):
self.tree.heading(col, text=col)
self.tree.column(col, width=w, anchor="w" if col != "金額" else "e")
self.tree.pack(side=tk.LEFT, fill=tk.BOTH, expand=True)
sb = ttk.Scrollbar(list_frame, command=self.tree.yview)
self.tree.configure(yscrollcommand=sb.set)
sb.pack(side=tk.RIGHT, fill=tk.Y)
ttk.Button(main_frame, text="選択削除", command=self.delete_record).pack(
anchor="e", pady=(4, 0))
def add_record(self):
date_str = self.date_entry.get().strip()
desc = self.desc_entry.get().strip()
amount_str = self.amount_entry.get().strip()
kind = self.type_var.get()
if not desc or not amount_str:
messagebox.showwarning("警告", "内容と金額を入力してください")
return
try:
amount = int(amount_str.replace(",", ""))
except ValueError:
messagebox.showerror("エラー", "金額は整数で入力してください")
return
record = {"date": date_str, "desc": desc, "kind": kind, "amount": amount}
self.records.append(record)
self.amount_entry.delete(0, tk.END)
self.desc_entry.delete(0, tk.END)
self._refresh()
def _refresh(self):
for item in self.tree.get_children():
self.tree.delete(item)
income = expense = 0
for r in self.records:
sign = "+" if r["kind"] == "収入" else "-"
tag = "income" if r["kind"] == "収入" else "expense"
self.tree.insert("", tk.END,
values=(r["date"], r["desc"], r["kind"],
f"{sign}¥{r['amount']:,}"),
tags=(tag,))
if r["kind"] == "収入":
income += r["amount"]
else:
expense += r["amount"]
self.tree.tag_configure("income", foreground="#27ae60")
self.tree.tag_configure("expense", foreground="#e74c3c")
balance = income - expense
self.income_lbl.config(text=f"¥{income:,}")
self.expense_lbl.config(text=f"¥{expense:,}")
self.balance_lbl.config(text=f"¥{balance:,}",
fg="#3776ab" if balance >= 0 else "#e74c3c")
def delete_record(self):
sel = self.tree.selection()
if not sel:
return
idx = self.tree.index(sel[0])
self.records.pop(idx)
self._refresh()
if __name__ == "__main__":
root = tk.Tk()
app = App42(root)
root.mainloop()
5. コード解説
家計簿アプリのコードを、実際に書かれている実装に沿って解説します。
クラス設計とコンストラクタ
App42 クラスにアプリの全機能をまとめています(メソッド5個・全143行)。__init__ ではタイトル「家計簿アプリ」とウィンドウサイズ 580x550 を設定します。最後に _build_ui() で画面を組み立てます。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
ウィジェット構成
画面は tk.Frame×3(ほかにループでも生成)・tk.Label×2(ほかにループでも生成)・ttk.LabelFrame×2・ttk.Entry(ループで生成)・ttk.Combobox・ttk.Button×2・ttk.Treeview・ttk.Scrollbar で構成しています。見出し付きの枠(LabelFrame)は「記録を追加」「記録一覧」のラベルでエリアを区切っています。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
イベント処理とボタンの接続
「追加」ボタン(add_record())・「選択削除」ボタン(delete_record())を command= で接続しています。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
例外処理
try-except で ValueError を捕捉しています。あわせて messagebox.showerror()・messagebox.showwarning() のダイアログで、ユーザーへの通知・確認を行います。
※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。
6. ステップバイステップガイド
このアプリをゼロから自分で作る手順を解説します。コードをコピーするだけでなく、実際に手順を追って自分で書いてみましょう。
-
1ファイルを作成する
新しいファイルを作成して app42.py と保存します。使うのは
datetime・tkinterだけなので、追加インストールは不要です。 -
2クラスの骨格を作る
App42クラスを定義し、__init__と、末尾のroot = tk.Tk()~mainloop()の最小構成を書いて、まず空のウィンドウが出ることを確認します。 -
3ウィンドウを設定する
title("家計簿アプリ")・geometry("580x550")・configure(bg="#f8f9fc")・minsize(580, 550)をコンストラクタで設定します。 -
4画面部品を並べる
_build_ui()の中で、tk.Frame×3(ほかにループでも生成)・tk.Label×2(ほかにループでも生成)・ttk.LabelFrame×2・ttk.Entry(ループで生成)・ttk.Combobox・ttk.Button×2・ttk.Treeview・ttk.Scrollbarを作って配置します(掲載コードと同じ並び順で書くとレイアウトが一致します)。まず表示だけ確認しましょう。 -
5イベントを接続する
「2. 機能一覧」で挙げた各ボタンを
command=で対応するメソッド(add_record()・delete_record())につなぎます。 -
6中心になるメソッドを実装する
アプリの本体である
add_record()(20行)・delete_record()(7行)・_refresh()(22行) を実装します。 -
7動作確認する
python app42.pyで起動し、各ボタンが反応することを確認します。
7. カスタマイズアイデア
基本機能を習得したら、以下のカスタマイズに挑戦してみましょう。少しずつ機能を追加することで、Pythonのスキルが飛躍的に向上します。
💡 ダークモードを追加する
bg色・fg色を辞書で管理し、ボタン1つでダークモード・ライトモードを切り替えられるようにしましょう。
💡 結果をファイルに保存する
このコードに保存処理はないため、表示中の数値や結果はアプリを閉じると消えます。テキストファイルへ書き出して、次回起動時に読み込む機能を追加してみましょう。
💡 配色をまとめて管理する
背景色 #f8f9fc をはじめ、色コードが各所に直書きされています。色を1つの辞書にまとめると、テーマの切り替えが1か所の変更で済むようになります。
8. よくある問題と解決法
❌ 文字のフォントが崩れる・見た目が違う
原因:このコードは font=("Noto Sans JP", ...) のようにフォント名を直接指定しています。環境にこのフォントが入っていないと、OS が代わりのフォントで表示するため、見本と見た目が変わることがあります。
解決法:動作には支障ありません。気になる場合は font 引数の名前を自分の OS に入っているフォントへ書き換えるか、font 引数を省略してください。
❌ ウィンドウの大きさが画面に合わない
原因:geometry("580x550") の固定サイズで起動するためです。
解決法:geometry() と minsize() の両方の数値を書き換えて起動サイズを調整してください。なお、このコードにはウィンドウサイズを固定する設定(resizable の指定)が無いため、ウィンドウの端をドラッグしたサイズ変更は既定どおり可能です。ただし minsize(580, 550) を指定しているため、起動時の大きさより小さくは縮められません(縮めると画面部品が表示されなくなるのを防ぐためです)。
9. 練習問題
アプリの理解を深めるための練習問題です。気になるものから挑戦してみてください(課題3は定型の発展課題です)。このアプリは入力した数字を並べて集計するだけで、家計や税務のアドバイスをするものではありません。練習では実際の家計データではなく、テスト用の数字で試してください。どちらの課題も新しいライブラリは要りません。
-
課題1:金額が0以下のときは登録させない
いまは金額に
0や-500を入れてもそのまま記録されます。1以上の整数だけを受け付けるようにしましょう。期待結果:金額に
0を入れて「追加」を押すと「金額は1以上の整数で入力してください」と出て、一覧に行が増えない。残高の数字も変わらない。-500でも同じ。合格条件
0と-500は追加されず、収入合計・支出合計・残高が変わらない1は今までどおり追加できる1,000のようなカンマ付きも今までどおり追加できる
ヒント①(どこを触るか): 触るのは1か所です。
add_record()のexcept ValueError:の3行の下、record = {"date": date_str, ...}を作る前に足します。
ヒント②(使うもの):if amount <= 0:でmessagebox.showerror("エラー", "金額は1以上の整数で入力してください")を出し、そのままreturnします。少し上のif not desc or not amount_str:がまったく同じ形です。
つまずきやすい点:messagebox.showerror(...)だけ書いてreturnを忘れると、警告を閉じたあとにself.records.append(record)まで進み、0円の記録が一覧に入ります。警告そのものは出るので、効いているように見えて気付きにくいところです。 -
課題2:一覧を日付の古い順に並べる
いまの一覧は追加した順に並びます。日付をさかのぼって入力しても正しい順に見えるよう、記録そのものを日付順に並べ替えましょう。
期待結果:日付
2026-09-10で1件追加したあと、日付を2026-09-01に書き換えてもう1件追加すると、一覧の1行目が2026-09-01の行になる(いまは追加した順のまま)。合格条件
- 追加した順番に関係なく、日付の古い行が上に来る
- 行を選んで「選択削除」を押すと、選んだ行だけが消える
- 収入合計・支出合計・残高の数字は並べ替えても変わらない
ヒント①(どこを触るか): 触るのは1か所です。
add_record()のself.records.append(record)の直後に足します。_refresh()とdelete_record()は触りません。
ヒント②(使うもの):self.records.sort(key=lambda r: r["date"])と書きます。日付欄には起動時にstr(date.today())の2026-09-10形式が入るので、文字列のまま並べても日付順と一致します。
つまずきやすい点:_refresh()の中でsorted(self.records, ...)を使い、画面の並びだけ変える方法は避けてください。delete_record()はself.tree.index(sel[0])(画面の行番号)でself.recordsを消すので、別の記録が消えます。エラーは出ないため、消えた行を見るまで気付けません。日付欄を2026/9/1のような形に書き換えた行があると、文字列の並びがズレて正しい順になりません。 -
課題3:保存機能の追加
入力値や計算結果をファイルに保存する機能を追加しましょう。jsonやcsvモジュールを使います。
写経中に赤いエラー文が出たら、Pythonエラー一覧&解決法(英語メッセージ逆引き)で原因と直し方をすぐ確認できます。
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