初心者向け No.26

お絵描きアプリ

マウスで自由に描けるシンプルなペイントアプリ。Canvas上のマウスイベント処理を学びます。

🎯 難易度: ★★☆ 📦 ライブラリ: tkinter(標準ライブラリ), Pillow ⏱️ 制作時間: 30〜90分

1. アプリ概要

マウスで自由に描けるシンプルなペイントアプリ。Canvas上のマウスイベント処理を学びます。

このアプリは基本カテゴリに分類される実践的なGUIアプリです。使用ライブラリは tkinter(標準ライブラリ)・Pillow で、難易度は ★★☆ です。掲載コードは先頭で from PIL import Image, ImageDraw を読み込みます。実行前に pip install pillow が必要です。描画そのものは tkinter の Canvas で行います。

このアプリは「入門」カテゴリです。ウィンドウ・ウィジェット・イベントの基本構造を反復することで、後から複雑なアプリを作るときの骨格が身につきます。tkinter(標準ライブラリ)の Canvas を活かして実装するこの構造は、他のアプリにも応用が効きます。

完成形を見てから細部の解説に進む流れが効果的です。実行→気になる箇所を解説で確認→自分の手で改造、というサイクルで定着が早まります。

カスタマイズ章では具体的な拡張アイデアを示しています。一つ実装するごとに動作確認することで、変更が予期せぬ副作用を起こさないかも体感できます。

お絵描きアプリ 実行画面(Windows)
実行画面(Windows)
お絵描きアプリ 実行画面(Linux Mint)
実行画面(Linux Mint)

2. 機能一覧

  • ループで生成するボタン群を set_color() に接続
  • ボタン(choose_color())・「消しゴム」ボタン(set_color())・「クリア」ボタン(clear())で操作
  • マウス操作 <ButtonPress-1> から start_draw() を実行
  • マウス操作 <B1-Motion> から draw() を実行
  • マウス操作 <ButtonRelease-1> から stop_draw() を実行
  • ウィンドウはタイトル「お絵描きアプリ」・サイズ 640x520 で起動

3. 事前準備・環境

ℹ️
動作確認環境

Python 3.10 以上 / Windows 11(実機)で起動・基本操作を確認 / Linux Mint 22.3(仮想マシン)で起動・画面表示を確認(macOS は未検証)

Windows 11(実機)で起動と基本操作を確認しています(全機能の網羅テストではありません)。Linux Mint 22.3(仮想マシン)では起動と画面表示を確認しました。macOS は必要なライブラリ(pip install)を入れれば動作する想定ですが、未検証です。

  • Python 3.10 以上
  • OS: Windows 11(実機で起動・基本操作を確認)・Linux Mint 22.3(仮想マシンで起動・画面表示を確認)

4. 完全なソースコード

💡
コードのコピー方法

右上の「コピー」ボタンをクリックするとコードをクリップボードにコピーできます。

📦 必要なライブラリをインストール(初回のみ)
pip install pillow
app26.py
import tkinter as tk
from tkinter import ttk, colorchooser, messagebox
from PIL import Image, ImageDraw
from tkinter import filedialog


class App26:
    """お絵描きアプリ"""

    def __init__(self, root):
        self.root = root
        self.root.title("お絵描きアプリ")
        self.root.geometry("640x520")
        self.root.configure(bg="#f8f9fc")
        self.pen_color = "#222222"
        self.pen_size = 4
        self.last_x = self.last_y = None
        self._build_ui()

    def _build_ui(self):
        title_frame = tk.Frame(self.root, bg="#3776ab", pady=8)
        title_frame.pack(fill=tk.X)
        tk.Label(title_frame, text="お絵描きアプリ",
                 font=("Noto Sans JP", 15, "bold"),
                 bg="#3776ab", fg="white").pack()

        # ツールバー
        toolbar = tk.Frame(self.root, bg="#e8eaf0", pady=6)
        toolbar.pack(fill=tk.X, padx=4)

        # 色ボタン
        tk.Label(toolbar, text="色:", bg="#e8eaf0").pack(side=tk.LEFT, padx=4)
        self.color_btn = tk.Button(toolbar, bg=self.pen_color, width=3,
                                   relief=tk.RAISED, command=self.choose_color)
        self.color_btn.pack(side=tk.LEFT, padx=2)

        # よく使う色
        for color in ["#000000", "#ffffff", "#e74c3c", "#3498db", "#2ecc71",
                      "#f39c12", "#9b59b6", "#1abc9c"]:
            tk.Button(toolbar, bg=color, width=2, relief=tk.FLAT,
                      command=lambda c=color: self.set_color(c)).pack(side=tk.LEFT, padx=1)

        # 太さ
        tk.Label(toolbar, text="太さ:", bg="#e8eaf0", padx=8).pack(side=tk.LEFT)
        self.size_var = tk.IntVar(value=self.pen_size)
        ttk.Scale(toolbar, variable=self.size_var, from_=1, to=30,
                  orient=tk.HORIZONTAL, length=80,
                  command=lambda v: setattr(self, "pen_size", int(float(v)))).pack(side=tk.LEFT)

        # 消しゴム・クリア
        tk.Button(toolbar, text="消しゴム", bg="#e8eaf0", relief=tk.FLAT,
                  command=lambda: self.set_color("#ffffff")).pack(side=tk.LEFT, padx=4)
        tk.Button(toolbar, text="クリア", bg="#e8eaf0", relief=tk.FLAT,
                  command=self.clear).pack(side=tk.LEFT, padx=2)

        # キャンバス
        self.canvas = tk.Canvas(self.root, bg="white", cursor="crosshair",
                                relief=tk.SUNKEN, bd=1)
        self.canvas.pack(fill=tk.BOTH, expand=True, padx=4, pady=4)

        self.canvas.bind("<ButtonPress-1>", self.start_draw)
        self.canvas.bind("<B1-Motion>", self.draw)
        self.canvas.bind("<ButtonRelease-1>", self.stop_draw)

    def choose_color(self):
        color = colorchooser.askcolor(color=self.pen_color)[1]
        if color:
            self.set_color(color)

    def set_color(self, color):
        self.pen_color = color
        self.color_btn.config(bg=color)

    def start_draw(self, event):
        self.last_x = event.x
        self.last_y = event.y

    def draw(self, event):
        if self.last_x and self.last_y:
            self.canvas.create_line(self.last_x, self.last_y, event.x, event.y,
                                    fill=self.pen_color, width=self.pen_size,
                                    capstyle=tk.ROUND, smooth=True)
        self.last_x = event.x
        self.last_y = event.y

    def stop_draw(self, event):
        self.last_x = self.last_y = None

    def clear(self):
        self.canvas.delete("all")


if __name__ == "__main__":
    root = tk.Tk()
    app = App26(root)
    root.mainloop()

5. コード解説

お絵描きアプリのコードを、実際に書かれている実装に沿って解説します。

クラス設計とコンストラクタ

App26 クラスにアプリの全機能をまとめています(メソッド8個・全96行)。__init__ ではタイトル「お絵描きアプリ」とウィンドウサイズ 640x520 を設定します。あわせて状態を保持する変数(self.pen_colorself.pen_sizeself.last_xself.last_y)を初期化し、最後に _build_ui() で画面を組み立てます。

※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。

ウィジェット構成

画面は tk.Frame×2・tk.Label×3・tk.Button×3(ほかにループでも生成)・ttk.Scaletk.Canvas で構成しています。

※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。

イベント処理とボタンの接続

ボタン(choose_color())・「消しゴム」ボタン(set_color())・「クリア」ボタン(clear())を command= で接続しています。ボタンはループ内で command=lambda c=color: self.set_color(c) の形で生成しています。既定引数でループ変数を固定するのがポイントで、これを書かないと全ボタンが最後の値で動いてしまいます。また bind("<ButtonPress-1>", ...) から start_draw()bind("<B1-Motion>", ...) から draw()bind("<ButtonRelease-1>", ...) から stop_draw() を呼べるようにイベントも登録しています。

※ 該当部分のコード本体は 「4. 完全なソースコード」 をご参照ください(重複表示を避けるため再掲を省略しています)。

6. ステップバイステップガイド

このアプリをゼロから自分で作る手順を解説します。コードをコピーするだけでなく、実際に手順を追って自分で書いてみましょう。

  1. 1
    ファイルを作成する

    新しいファイルを作成して app26.py と保存します。掲載コードは冒頭で from PIL import Image, ImageDraw を読み込むため、実行前に pip install Pillow が必要です(描画自体は tkinter の Canvas で行っており、PIL は画像保存へ拡張するときの土台として import しています)。

  2. 2
    クラスの骨格を作る

    App26 クラスを定義し、__init__ と、末尾の root = tk.Tk()mainloop() の最小構成を書いて、まず空のウィンドウが出ることを確認します。

  3. 3
    ウィンドウを設定する

    title("お絵描きアプリ")geometry("640x520")configure(bg="#f8f9fc") をコンストラクタで設定します。

  4. 4
    画面部品を並べる

    _build_ui() の中で、tk.Frame×2・tk.Label×3・tk.Button×3(ほかにループでも生成)・ttk.Scaletk.Canvas を作って配置します(掲載コードと同じ並び順で書くとレイアウトが一致します)。まず表示だけ確認しましょう。

  5. 5
    イベントを接続する

    「2. 機能一覧」で挙げた各ボタンを command= で対応するメソッド(choose_color()set_color()clear())につなぎます。ループ生成のボタンは command=lambda c=color: self.set_color(c) の形で接続します。bind("<ButtonPress-1>", ...)bind("<B1-Motion>", ...)bind("<ButtonRelease-1>", ...) の登録も忘れずに。

  6. 6
    中心になるメソッドを実装する

    アプリの本体である draw()(7行)・choose_color()(4行)・set_color()(3行)など を実装します。

  7. 7
    動作確認する

    python app26.py で起動し、各ボタンが反応すること・マウス操作(クリック・ホイールなど)が効くことを確認します。

7. カスタマイズアイデア

基本機能を習得したら、以下のカスタマイズに挑戦してみましょう。少しずつ機能を追加することで、Pythonのスキルが飛躍的に向上します。

💡 ダークモードを追加する

bg色・fg色を辞書で管理し、ボタン1つでダークモード・ライトモードを切り替えられるようにしましょう。

💡 結果をファイルに保存する

このコードに保存処理はないため、表示中の数値や結果はアプリを閉じると消えます。テキストファイルへ書き出して、次回起動時に読み込む機能を追加してみましょう。

💡 入力履歴機能

以前の入力値を覚えておいてComboboxのドロップダウンで再選択できる履歴機能を追加しましょう。

8. よくある問題と解決法

❌ 文字のフォントが崩れる・見た目が違う

原因:このコードは font=("Noto Sans JP", ...) のようにフォント名を直接指定しています。環境にこのフォントが入っていないと、OS が代わりのフォントで表示するため、見本と見た目が変わることがあります。

解決法:動作には支障ありません。気になる場合は font 引数の名前を自分の OS に入っているフォントへ書き換えるか、font 引数を省略してください。

❌ 写経したら全部のボタンが同じ動きになる

原因:ループでボタンを作るとき、このコードは command=lambda c=color: self.set_color(c) のように既定引数でループ変数を固定しています。これを省略してループ変数を直接書くと、ループ終了後の最後の値が全ボタンで共有されてしまいます(Python のクロージャの有名な罠です)。

解決法:掲載コードのとおり、lambda の既定引数でその時点の値を渡してください。

❌ ウィンドウの大きさが画面に合わない

原因:geometry("640x520") の固定サイズで起動するためです。

解決法:この数値を書き換えて起動サイズを調整してください。なお、このコードにはウィンドウサイズを固定する設定(resizable の指定)が無いため、ウィンドウの端をドラッグしたサイズ変更は既定どおり可能です。

9. 練習問題

アプリの理解を深めるための練習問題です。気になるものから挑戦してみてください(課題3は定型の発展課題です)。このアプリは描いた絵を保存しないので、ウィンドウを閉じると絵は消えます。試すときは短い線を数本引けば十分です。

  1. 課題1:キャンバスの背景色を変えられるようにする

    背景は白のまま固定です(57行)。ツールバーから背景の色を選べるようにしましょう。

    期待結果:「背景」ボタンを押して水色を選ぶと、キャンバス全体が水色になり、すでに描いた線はそのまま残る

    合格条件

    • 背景を変えても、描いてある線が消えない
    • ペンの色(色ボタンの見た目)は変わらない
    • 背景を変えたあとも、そのまま続けて描ける

    ヒント①(どこを触るか): 触るのは2か所です。ツールバーにボタンを足す部分(53〜54行の「クリア」ボタンの隣)と、選ばれた色を背景に反映する新しいメソッドです。
    ヒント②(使うもの): choose_color()(65〜68行)が手本です。colorchooser.askcolor() は選ばれた色を [1] 番目に #rrggbb の文字列で返し、キャンセルすると None になります。背景の変更は self.canvas.config(bg=color) です。
    つまずきやすい点: 「消しゴム」は52行で set_color("#ffffff") と白を決め打ちしています。背景を白以外にすると、消しゴムでなぞった跡が白い線として残ります。背景と同じ色を消しゴムにも渡すよう、あわせて直す必要があります。

  2. 課題2:「クリア」を押す前に確認する

    いまは「クリア」を押した瞬間に全部消えます(89〜90行)。押し間違いで絵を失わないよう、確認を出しましょう。

    期待結果:「クリア」を押すと「すべて消しますか?」の確認が出る。「いいえ」なら絵が残り、「はい」なら今までどおり全部消える

    合格条件

    • 「いいえ」を選ぶと線が1本も消えない
    • 「はい」を選ぶと今までどおりキャンバスが空になる
    • 確認のあとも、そのまま続けて描ける

    ヒント①(どこを触るか): 触るのは1か所です。clear()self.canvas.delete("all")(90行)の手前です。
    ヒント②(使うもの): messagebox は2行目で読み込み済みですが、このコードではまだ一度も使っていません。messagebox.askyesno("確認", "…") は「はい」で True を返します。
    つまずきやすい点: showinfo を使うと「OK」ボタンだけの案内になり、押した答えを受け取れないので必ず消えます。askyesno の戻り値を if で見て、False のときは return で抜けます。

  3. 課題3:保存機能の追加

    入力値や計算結果をファイルに保存する機能を追加しましょう。jsonやcsvモジュールを使います。

🚀
次に挑戦するアプリ

このアプリをマスターしたら、次のアプリにも挑戦してみましょう。

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エラーが出て動かないときは

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