BOOK REVIEW

「退屈なことはPythonにやらせよう 第3版」は第2版と何が違うのか

2026年3月に出た第3版を、第2版と章単位で突き合わせて比較しました。新しく設けられた4つの章、独立章として姿を消した章、章番号の入れ替えまで一覧にしています。「第2版を持っているが買い直す価値はあるのか」「これから自動化を学ぶ1冊目にしていいのか」の判断材料としてお使いください。

🎯 対象: 第2版所持者・業務自動化を学びたい方 📘 全24章 / 800ページ ⏱️ 読了: 約12分

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この記事の立場

本記事は、出版社の公式情報と、著者が公開している原著の目次・本文構成を突き合わせて分析した紹介記事です。通読後の所感は、読み終えたあとに追記します。

1. 結論:買うべき人と、買わなくていい人

先に結論から書きます。第3版で新しく設けられた章は4つ、既存の章に足された大きな要素が4つです。この8点に自分の目的が重なるかどうかで、買い替えの答えはほぼ決まります。

あなたの状況判断理由
これから業務自動化を学ぶ(本書は未所持)第3版でよい扱うライブラリとサービスが現行のものに更新されている。古い版をあえて選ぶ理由がない
第2版(2023年)を持っている目的次第文法パートの学び直し目的なら不要。データベース・画像の文字認識・音声の文字起こし・配布可能なコマンドラインツールに興味があるなら価値あり
初版(2017年)を持っている買い替えを推奨章構成が別物といえるほど変わっており、扱うサービスも入れ替わっている
プロのソフトウェア開発者を目指している本書は主目的に合わない著者自身が「本書はそういう人向けではない」と序文で明言している

著者のAl Sweigart氏は原著の序文で、想定読者を「事務職、管理業務の担当者、研究者など、仕事や趣味でコンピュータを使うすべての人」と定義しています。プロの開発者志望に対しては「本書はそうした人のための本ではない(This book is not for those people. It's for everyone else.)」とはっきり書いています。出典は原著第3版のIntroductionです。この線引きは初版から一貫しており、第3版でも変わっていません。

発売元のオーム社も、商品ページの「このような方におすすめ」欄に「RPAを始めたいホワイトカラー、Python初心者、プログラミング初学者、学生、教師」と挙げています(出典: オーム社の書籍ページ)。言語仕様を体系的に学ぶ教科書ではなく、目の前の面倒な作業を片づける道具箱という位置づけを、まず押さえておいてください。

2. 書籍データ(版・ページ数・ISBN)

版を間違えて買う事故がいちばん起きやすい本なので、書誌情報を先に確認しておきます。

項目内容
書名退屈なことはPythonにやらせよう 第3版 ―ノンプログラマーにもできる自動化処理プログラミング
原著Automate the Boring Stuff with Python, 3rd Edition
著者 / 訳者Al Sweigart 著 / 相川 愛三 訳
出版社 / 刊行オライリー・ジャパン / 2026年3月26日
ページ数 / 判型800ページ / A5
ISBN978-4-8144-0152-9
フォーマットPrint / PDF / EPUB
対象レベルプログラミング未経験〜初級(文法の基礎から解説あり)
定価9冊の比較表に掲載(価格情報は1か所に集約しています)

書誌情報の出典はオライリー・ジャパンの公式ページです。同ページでは本書を「自作RPA本の草分けとして日本でも圧倒的な支持を集めた世界的ベストセラー書の改訂第3版」と紹介しています。

版の系譜も見ておきましょう。改訂の間隔が明らかに詰まっています。

刊行ページ数前版からの間隔
初版2017年6月616
第2版2023年3月744約5年9か月
第3版2026年3月800ちょうど3年

初版から第2版までは6年近く空きましたが、第2版から第3版はわずか3年です。自動化で使う道具の入れ替わりが速くなっている、という事情がそのまま改訂サイクルに出ています。中古で古い版を安く買う判断は、この本に関してはおすすめしにくいところです。

なお英語の原著(No Starch Press版)は2025年の刊行で、書店各社の書誌情報では672ページとされています。日本語版が800ページなのは訳文の組版によるもので、日本語版だけ内容が2割多いという意味ではありません。

この1冊を通すと、Excel・PDF・メールの手作業に加えて、第3版から入ったデータベース・画像の文字認識・音声の文字起こし・人に渡せる実行ファイルまで自分で作れるようになります。定価は上の表の「定価」欄のリンク先(比較表ページ)にまとめています。

第3版(2026年3月刊・全800ページ)のリンクです。第2版とは収録内容が異なるため、版を確かめてからご購入ください。

3. この本で何が学べるのか

第3版は全24章と付録3本という構成です。大きく2部に分かれています。

  • 第I部(1〜8章): Pythonの基礎 — 変数、条件分岐、繰り返し、関数、デバッグ、リスト、辞書、文字列の扱い
  • 第II部(9〜24章): 処理の自動化 — 正規表現、ファイルの読み書きと整理、コマンドラインツール、Webスクレイピング、Excel、Googleスプレッドシート、データベース、PDFとWord、CSV/JSON/XML、スケジューリング、メールと通知、画像とグラフ、文字認識、キーボードとマウスの操作、音声
  • 付録A〜C — パッケージのインストール、演習問題の解答、プッシュ通知のリアルタイム受信

この本の性格は、章の並びを見ると分かります。第I部で文法をひととおり触ったあと、第II部の各章がそれぞれ「◯◯を自動化する」という完成物になっている構成です。読者は文法を覚えるために文法を学ぶのではなく、「フォルダに散らばったファイル名を一括で直す」「請求書PDFから必要な行だけ抜き出す」といった成果物を作りながら進みます。

著者は第3版で16本の演習プロジェクトを新たに追加したと序文で述べています。手を動かす題材が増えたぶん、読むだけで終わらせずに済む本になっています。

裏を返すと、文法の解説そのものは駆け足です。iffor の説明は必要十分ですが、クラス設計や型ヒントのような「きれいなコードを書くための知識」はこの本の守備範囲ではありません。文法をもう少しゆっくり固めたい方は、Pythonの基本文法組み込み関数の使い方を併走用に開いておくと進みが速くなります。

4. 第2版から第3版への変化を章単位で見る

ここがこの記事の中心です。第2版は20章、第3版は24章。単純に4章増えたように見えますが、中身の入れ替わりはそれだけではありません。変化があった箇所だけを抜き出すと次のようになります。

第2版第3版何が起きたか
2 フロー制御2 if-elseとフロー制御
3 繰り返し
1つの章が2つに分割された
11 デバッグ(第II部)5 デバッグ(第I部)後半から前半へ大きく前倒し
6 文字列の操作8 文字列とテキストの編集改題
8 入力検証該当する章なし独立した章としては消滅
12 コマンドラインプログラムの設計とデプロイ新設
12 Webスクレイピング13 WebスクレイピングPlaywrightを扱う節が追加
16 SQLiteデータベース新設
16 CSVとJSON18 CSV、JSON、XMLXMLが追加
18 電子メールやSMSの送信20 電子メールの送信とプッシュ通知SMS中心からプッシュ通知中心へ
19 画像の操作21 グラフの作成と画像の操作Matplotlibによるグラフ作成が追加
22 画像中の文字認識新設
24 音声合成と音声認識新設
付録D PyInstallerによる実行ファイル作成12章の中の1節へ付録一覧から消え、12章にPyInstallerの節あり

表に出てこない章(Pythonの基本、関数、リスト、辞書、正規表現、ファイルの読み書きと管理、Excel、Googleスプレッドシート、PDFとWord、スケジューリング、キーボードとマウスの操作など)は、章番号が繰り下がっただけで扱うテーマ自体は継続しています。Excelはopenpyxl、GoogleスプレッドシートはEZSheetsのままです。第2版で書いたコードが無駄になることはありません。

この表だけで判断がついた方は、2章の書籍データ(版の確認と楽天リンク)へ戻れます。もう少し中身を見てから決めたい方は、このまま読み進めてください。

この表の中で、特に判断に効く4点を掘り下げます。

デバッグが11章から5章へ前倒しされた

第2版ではデバッグの解説が第II部の11章、つまり自動化の実践に入ってから登場していました。第3版では第I部の5章、関数の直後に移動しています。

これは地味に見えて、独学者にとって影響の大きい変更です。プログラミングで最初に心が折れるのは、たいてい「エラーが出たが原因が分からない」瞬間だからです。try/except やログ、ブレークポイントの使い方を早い段階で手にしておけば、その後の章で詰まっても自力で復旧できる確率が上がります。挫折率を下げにいった構成変更だと読めます。

エラーメッセージの読み方をもう少し補強したい方は、Pythonエラー一覧と対処法を手元に置いておくと、本書の5章と噛み合います。

「入力検証」の独立章が消えた

第2版の8章は入力検証(pyinputplusを使った入力チェック)に丸ごと1章を割いていました。第3版には、これに対応する独立した章がありません。英語の原著でも同様に、第2版にあった「Input Validation」の章が第3版には見当たりません。

入力チェックが不要になったわけではなく、1章を使って扱うテーマではなくなったと読むのが妥当でしょう。第2版でこの章を実務に使っていた方は、第3版に買い替えたあとも第2版を処分せずに残しておく手があります。ここは買い替えで唯一「減る」ポイントなので、先に知っておいてください。

付録D(PyInstaller)が本編12章に入った

第2版の日本語版には、日本語版独自の付録DとしてPyInstallerによる実行ファイル作成の解説がありました。第3版の日本語版の付録はA・B・Cの3本で、この付録Dは一覧にありません。

一方で第3版の12章には、PyInstallerでスクリプトをコンパイルする節が置かれています。版元が「付録Dを本編に統合した」と明言しているわけではありません。それでも読者から見れば、実行ファイル化の解説は本編12章で仮想環境やデプロイとセットで読める形になっています。「自分のPCでしか動かないスクリプト」を「同僚のPCに渡せる実行ファイル」に変える手順が、単発の付録ではなく体系の一部として置かれたわけです。

SMSからプッシュ通知へ軸足が移った

第2版の18章はSMS送信をそれなりの分量で扱っていました。第3版の20章にも、SMSメールゲートウェイを使う節は残っています。ただしTwilioのような通信事業者のAPIへの言及は「大量に確実に送りたい場合の手段」という短いものにとどまり、ntfyによるプッシュ通知が主役の座に移りました。

これは非エンジニアにとって素直な改善です。ntfyは専用のPythonパッケージを入れる必要がなく、13章で学ぶHTTPリクエストの知識だけでスマホに通知を飛ばせます。電話番号の登録も課金も不要で「長時間かかる処理が終わったらスマホに知らせる」が作れる、と考えると使いどころが見えるはずです。

5. 新しく設けられた4つの章の中身

新設された4章を、それぞれ「読むと何ができるようになるか」で整理します。

16章 SQLiteデータベース

Pythonの標準ライブラリ sqlite3 を使う章です。データベースの作成、レコードの追加・取得・更新・削除、トランザクションの取り消し、バックアップ、テーブルの結合までを扱います。追加のインストールは不要で、import sqlite3 だけで始められます。

この章の価値はExcelファイルを台帳代わりに使うのをやめられる点にあります。行数が増えたときの動作の重さ・複数人で同時に編集したときの競合・変更履歴の追いにくさといった悩みは、台帳をデータベースに移すと扱いやすくなります。表計算ソフト側にも共同編集の仕組みはありますが、台帳用途ではデータ構造の面でデータベースが向きます。本書ではDB Browser for SQLite、SQLiteStudio、DBeaver Communityといった無料のGUIツールも紹介されています。SQLに不慣れでも、中身を目で確認しながら進められます。

標準ライブラリでどこまでできるかはよく使うPythonライブラリ50選の標準ライブラリ節でも触れています。

12章 コマンドラインプログラムの設計とデプロイ

ターミナルの使い方、仮想環境、pipでのパッケージ導入、テキストベースのプログラム設計、そしてPyInstallerでの実行ファイル化までを1章にまとめた新設章です。

ここを読むと「自分のPCでしか動かないスクリプト」から「人に渡せる道具」へ進めます。自動化を覚えた人が次にぶつかるのは、たいてい「同僚のPCにPythonが入っていない」という壁だからです。

# 本書12章で扱われるコンパイルの流れ(本書記載のコマンド)
pip install pyinstaller
python -m PyInstaller --onefile yourScript.py

仮想環境の作り方をもう一段詳しく知りたい場合は、Pythonのインストールと仮想環境を先に読んでおくと12章がスムーズです。

22章 画像中の文字認識(OCR)

PyTesseractを使って、画像やスキャンした書類の中の文字をテキストとして取り出す章です。スキャナアプリと連携する節もあります。

できるようになるのは「紙で届く帳票やスクリーンショットを、検索・集計できるテキストに変えること」。コピーできないPDFや写真から数字を手で打ち直している業務があるなら、この章がいちばん効きます。

ただし、この章はpip install だけでは終わりません。Python側のPyTesseractに加えて、Tesseract OCRエンジン本体を別途インストールする必要があります。手順はOSごとに異なります。

  • Windows: 配布されているインストーラを入れてPATHを通す(日本語データはインストーラのオプションで追加)
  • macOS: brew install tesseract(日本語データは brew install tesseract-lang
  • Linux: sudo apt install tesseract-ocr(日本語データは sudo apt install tesseract-ocr-all

日本語を読み取るなら、エンジン本体に加えて言語データの導入までが前提になります。つまりこの章の関門はPCの性能ではなく環境構築の手数です。PATHやインストール周りで止まったときはModuleNotFoundErrorの対処インストール手順を先に確認してください。

24章 音声合成と音声認識

pyttsx3でテキストを読み上げさせ、OpenAIのWhisperで音声を文字起こしする章です。字幕ファイル(SRT)の作成や、yt-dlpによる動画のダウンロードにも触れています。

この章を読むと会議やインタビューの録音を、自分のPCの中だけで文字起こしできるようになります。クラウドの文字起こしサービスに音声を上げずに済むので、社外に出せない音源を扱う場面では現実的な選択肢になります。

# 本書24章で扱うインストール(本書記載のコマンド)
pip install pyttsx3
pip install openai-whisper

Whisperを動かすにはPythonのパッケージに加えて、コマンドラインツールの ffmpeg が別途必要です(openai-whisperの公式パッケージページに記載)。マシンの目安は次の章で扱います。

既存の章に足された4つの要素

新設章のほかに、既存の章へ加わった要素が4つあります。

追加された要素できるようになること
13 WebスクレイピングPlaywrightJavaScriptで描画されるページの操作。Seleniumと併記で、置き換えではない
20 電子メールの送信とプッシュ通知ntfy専用パッケージなしでスマホへプッシュ通知
21 グラフの作成と画像の操作Matplotlib集計結果をその場でグラフ画像として出力
18 CSV、JSON、XMLXML設定ファイルや業務システムの出力データの読み取り

Playwrightについては誤解が広がりやすいので補足します。第3版の13章はSeleniumとPlaywrightの両方を扱っており、節見出しも両方存在します。Seleniumが本から消えたわけではありません。同じ13章には、webbrowser、requests、Beautiful Soupに加えて天気APIを利用する節も置かれています。スクレイピング以外の取得手段にも触れられているのが第3版の特徴です。

6. 動かす前に知っておきたい環境の話

本書は「読むだけ」で終わらせない構成ですが、章によって準備の重さがまったく違います。手を出す順番を決めるために、pipだけで済むかどうかを整理しました。

必要なものpipだけで済むか
16 SQLite標準ライブラリ sqlite3インストール自体が不要
20 通知(ntfy)専用パッケージなし(HTTPリクエストのみ)不要
12 実行ファイル化pip install pyinstaller済む
13 Playwrightpip install playwright 後に playwright installブラウザ本体のダウンロードが追加で走る
22 OCRPyTesseract+Tesseractエンジン本体済まない(別インストール)
24 音声認識pip install openai-whisperffmpeg済まない(別インストール)

最初に手を出すなら、準備がいらない16章のSQLiteか20章の通知が向いています。逆に22章と24章は、本の内容以前に環境構築で時間を使う覚悟が要ります。

Whisperを動かすマシンの目安

24章の文字起こしは、選ぶモデルによって必要なメモリと処理時間が大きく変わります。原著第3版の24章には、次の目安表(Table 24-1)が掲載されています。以下は同表から必要な列だけを抜き出して引用したものです。

モデルファイルサイズ必要メモリの目安15分の音声の処理時間
tiny74MB1GB1分20秒
base142MB1GB2分34秒
small472MB2GB6分37秒
medium1.5GB5GB20分17秒
large-v33GB10GB32分58秒

この表は原著第3版24章のTable 24-1の掲載値をもとにしています。出典はAl Sweigart『Automate the Boring Stuff with Python, 3rd Edition』のChapter 24です(2026年8月1日閲覧)。当サイトの実測値ではありません。原著には「著者のノートPCでの計測結果」とあるだけで、CPUやGPUの構成までは書かれていないため、この数字は確定した性能値ではなく相対的な目安として見てください。Whisperの公式リポジトリでも、モデル別の必要VRAMとしてtinyが約1GB、largeが約10GBという同水準の値が示されています。

ここから読み取れる実用的な結論は2つです。

  • baseモデルなら、いま使っているPCで試せる可能性が高い。必要メモリの目安は1GBで、著者も「用途の99パーセントにはbaseで十分、精度が要るときはmedium」と書いています。まずbaseで自分の音源を1本かけてみるのが正解です。
  • mediumやlarge-v3を実用的な速度で回すなら、GPU搭載機が現実的。原著の同章にも、NVIDIAのCUDAを使って高速化する方法(device='cuda' の指定)が記載されています。

後者に当てはまる場合の機種選びはPython学習・開発におすすめのPC(ハイエンド帯)にまとめています。ただし、いきなり買い替えを検討する必要はありません。まずbaseで試し、精度か速度に不満が出てから考える順番をおすすめします。

Playwrightは公式のシステム要件を確認しておく

13章で追加されたPlaywrightには、公式ドキュメントに明記されたシステム要件があります。必要なPythonは3.8以上です。対象OSはWindows 11以降(またはWindows Server 2019以降、WSL)、macOS 14 Sonoma以降、Linux は Debian 12/13・Ubuntu 22.04/24.04/26.04とされています(出典: Playwright Python 公式ドキュメント)。

注意してほしいのは、これは「Windows 10では動かない」という意味ではないことです。あくまで公式がサポート対象として挙げている範囲の話で、動作する可能性はあります。ただし不具合が出たときに公式サポートの範囲外になるので、Windows 10でこの章に本腰を入れるなら、その前提を理解しておく必要があります。学習環境の更新を検討する材料としては、十分に正当な理由になるでしょう。買い替えを具体的に検討する段階になったら、Python学習・開発におすすめのPCで必要なスペックの目安を確認できます(Playwrightの動作にハイエンド機は不要で、対応OSが動く構成であれば足ります)。

7. 原著が無料で読めるのに、日本語版を買う意味はあるか

この本を検討するなら、避けて通れない事実があります。著者は自著をWeb公開しており、第3版も英語で無料で読めますautomatetheboringstuff.com)。著者サイトには「All of my books are free under a Creative Commons license.」と記載されています(出典: inventwithpython.com)。この記事で章構成を照合できたのも、著者が原著を公開しているからです。

そのうえで、日本語版を買う価値があるかを正直に整理します。

観点無料の原著(英語)日本語版
言語英語のみ日本語訳あり
費用無料有料
形式Webページ紙・PDF・EPUB
通し読み・索引章ごとのページ移動(巻末索引は付録Bのページに収録)800ページを通しで参照可能
演習の解答付録Bに収録(無料公開版にもあり)付録Bに収録

判断の分かれ目は「英語の技術文書を読む速度」です。英語のドキュメントを日常的に読んでいて、画面で読み切れる方なら、原著で足ります。実際、著者本人がそのために公開しているのですから、遠慮する必要はありません。

一方で、日本語版に払う金額の中身は「翻訳にかかる時間の節約」と「参照のしやすさ」です。800ページの技術書を英語で読むと、日本語なら1時間で終わる章に3時間かかることは珍しくありません。学習のために確保できる時間が限られているなら、時間を金で買う判断は合理的です。手を止めずに読み進められるかどうかが、結局は完読率を決めます。

なお日本語版(相川愛三氏の訳)は無料公開されていません。無料で読めるのは英語の原著だけです。

ここで「原著で足りる」と判断された方は、著者の公開ページからそのまま読み始めてください。日本語版で読むと決めた方は、2章の書籍データで版を確認できます。

8. 自動化してよい業務、手を出さない方がいい業務

この本を読むと技術は身につきますが、職場の何を自動化するかは別の判断です。ここを外すと、せっかく作ったスクリプトがトラブルの原因になります。書評ではあまり触れられない部分なので、当サイトの立場を書いておきます。

自動化に向く業務は、次の3つを満たすものです。

  1. 回数が多い — 月1回の作業を自動化しても、作る時間の方が長くなります
  2. 手順が固定されている — 毎回判断が入る作業は、自動化するとかえって危険です
  3. 失敗しても取り返しがつく — 元データを上書きする処理は、まずコピーで試すべきです

逆に、手を出す前に立ち止まった方がいいものもあります。管理者権限が必要な操作、他人のアカウント情報を扱う処理、そして外部サイトからのデータ収集です。特に最後の1つは、技術的にできることと、やってよいことが一致しません。

Webスクレイピングを学ぶ前に、対象サイトの利用規約とrobots.txtを確認する手順はPythonで株価をスクレイピングする前ににまとめました。金融情報サイトの多くが自動取得を明確に禁止している実例を扱っています。本書の13章でも天気APIを利用する節が用意されており、公式に提供されている取得手段があるならそちらを使うという発想は、本書の中にも見つけられます。

本書は道具の使い方を教えてくれますが、使う場所の判断までは代わりにしてくれません。ここは読む側の責任範囲です。

なお本セクションは一般的な考え方の整理であり、法的助言ではありません。実際の業務に適用する前に、勤務先の社内規程・情報システム部門の方針・対象サービスの利用規約を必ずご確認ください。

9. 読者レビューの傾向

第3版は刊行から日が浅く、日本語のレビューはまだほとんど蓄積されていません。読書管理サービスのブクログでは、2026年8月1日時点で第3版の登録が31人・感想が5件、平均評価は4.00でした。第2版は同時点で登録297人・感想16件、平均4.27です(出典: ブクログ 第3版ブクログ 第2版)。

母数が31人では、第3版の評価はまだ数字として読めません。したがって、シリーズを通じた評価の傾向で判断することになります。

肯定的な声として多いのは、Pythonで何を自動化できるかの全体像がつかめる点と、基礎の解説が親切で道具としての使い方が分かる点です。章末の演習と、実際に動くプロジェクト形式の題材が評価されている点も共通しています(初版・第2版を扱った個人レビューを当サイトが要約したものです。個別の文言を引用したものではありません。参照例: hiyokonoko.comkagakunomemocho.com)。

一方で注意すべき指摘もあります。この本だけで完全な初心者が学び切るのは難しい、という趣旨の感想です(前掲のブクログ第2版の感想欄などに見られる傾向を当サイトが要約しました)。文法パートが駆け足であることの裏返しで、まったくの未経験から始める場合は入門書を1冊併走させる方が結果的に速くなります。第3版でデバッグの章が前倒しされたのは、この弱点への対応とも読めますが、それでも文法の詳しさで入門書に代わるものではありません。

10. 他の本と比べて決める

本書の立ち位置をひとことで言えば、「文法の教科書ではなく、自動化の実務書」です。だから比較すべき相手も目的によって変わります。

あなたの状況選ぶべきもの
プログラミングが初めて入門書を1冊 + 本書の併走。順番は入門書が先
文法は分かる。自動化がしたい本書からで問題なし
動くコードは書けるが、書き方に自信がない本書ではなく、コードの品質を扱う本へ
データ分析や機械学習が目的本書の守備範囲外。専門書へ

入門書との併走を選ぶ場合も、コードの書き方を扱う本へ進む場合も、候補の比較はPythonの参考書9冊の比較にまとめています。レベル別・目的別に整理してあるので、本書と組み合わせる1冊はそこから選んでください。本書そのものの位置づけは比較表の該当欄で確認できます。

本書を読み終えたあとの進み方に迷ったら、入門後の練習ロードマップ中級者向けアプリ100本が受け皿になります。本書で覚えた自動化に画面(GUI)を付けると、そのまま人に使ってもらえる道具になります。

11. よくある質問(FAQ)

Q. 第2版を持っています。第3版に買い替える価値はありますか?

目的次第です。データベース(16章)、実行ファイル化とコマンドラインツール(12章)、画像の文字認識(22章)、音声の文字起こし(24章)のどれかに興味があるなら価値があります。文法の学び直しや、Excel・PDF・ファイル整理の復習が目的なら、第2版のままで足ります。なお第2版にあった入力検証の章は第3版にないため、その章を使っている方は第2版も残しておくことをおすすめします。

Q. プログラミングが完全に初めてでも読めますか?

読めますが、この1冊だけで完結させるのは難しいという声が多く見られます。第I部で文法の基礎は扱われるものの解説は駆け足なので、入門書を1冊併走させる方が結果的に速く進みます。本書の第I部で分からない箇所が出たら、Pythonの基本文法エラー一覧で補ってください。

Q. 英語の原著が無料で公開されているそうですが、日本語版を買う意味はありますか?

あります。無料で公開されているのは英語の原著だけで、日本語版は無料公開されていません。英語の技術文書を日常的に読んでいる方は原著で足りますが、そうでない場合は日本語版の方が読み進める速度が上がります。800ページを日本語のまま通しで参照できることが、紙・電子版のいちばんの利点です。なお演習問題の解答(付録B)は無料公開版にも収録されているため、日本語版の利点は「日本語で読めること」と「紙・PDF・EPUBで手元に置けること」に絞られます。

Q. 全24章・800ページを最初から全部読む必要がありますか?

ありません。第I部(1〜8章)で文法を通したあとは、第II部から自分の業務に近い章だけを選んで読む使い方ができます。各章が独立した題材になっているためです。ただし13章のWebスクレイピングで学ぶHTTPリクエストは20章の通知にも使われるので、興味のある章の前提になっている章は先に読んでおくと迷いません。

Q. 24章のWhisperを試すには、高性能なパソコンが必要ですか?

まず試すだけならbaseモデルで十分で、本書が示す必要メモリの目安は1GBです。著者も用途の大半にはbaseで足りると書いています。より精度の高いmedium(目安5GB)やlarge-v3(目安10GB)を実用的な速度で回す段階になると、NVIDIAのGPUを搭載したマシンが現実的になります。判断に迷う場合はPCの選び方を参考にしてください。

Q. Playwrightが追加されたということは、Seleniumはもう不要ですか?

いいえ。第3版の13章はSeleniumとPlaywrightの両方を扱っており、置き換えではなく追加です。既存の記事や社内資産がSeleniumで書かれている場合、それらが読めなくなるわけではありません。

Q. 定価はいくらですか?

価格情報は更新の手間を1か所にまとめる方針のため、参考書9冊の比較表に集約しています。実売価格やセール価格は販売店によって異なるため、購入前にリンク先でご確認ください。

Q. 電子版(PDF・EPUB)で読めますか?

読めます。本書はPrint・PDF・EPUBの3形式で提供されています。800ページを検索しながら辞書的に使うなら電子版、写経しながら通読するなら紙が向きます。本文中の楽天市場のリンクは紙版です。電子版の取り扱いは販売店によって異なるため、出版社の公式ページまたは各電子書店でご確認ください。

Q. 第3版で扱うライブラリは、第2版から入れ替わっていますか?

主要なものは継続しています。Excelはopenpyxl、GoogleスプレッドシートはEZSheets、スクレイピングはrequestsとBeautiful Soupのままです。入れ替わりというより、新しい選択肢(Playwright、ntfy、Matplotlibなど)が追加された、と捉えるのが正確です。

12. まとめ:買う判断の3条件

最後に、判断を3つの条件に絞ります。次のうち1つでも当てはまるなら、第3版を買う理由があります。

  1. 本書を持っていない — 扱うライブラリとサービスが現行のものに更新されている第3版を選べば済みます
  2. 第2版を持っていて、新設4章のどれかに用がある — データベース、配布できるコマンドラインツール、画像の文字認識、音声の文字起こしのいずれか
  3. 初版(2017年)を持っている — 構成もサービスも別物になっており、買い替えの価値がはっきりしています

逆に、文法の復習が目的の第2版所持者、英語の原著で読み切れる方、プロの開発者を目指している方には、優先度の高い1冊ではありません。

読んだあとに手を動かす題材は中級者向けアプリ100本に用意しています。

▼ 買うと決めた方へ(第3版・2026年3月刊)

▲ 2章の楽天リンクへ戻る 参考書比較ページの該当欄へ(楽天リンクあり)

どちらも同じ第3版(ISBN 978-4-8144-0152-9)のリンクです。他の本と並べて決めたい方は参考書9冊の比較からどうぞ。

本記事は、生成AIを活用して下書きし、運営者が内容を確認・編集したうえで公開しています。AIの利用方針は免責事項をご覧ください。